飼育マニュアルに吠えろ!

どういう風の吹き回しか、ドッグフードにひき肉が混ざるようになった。ママがチキンの味が着いてる部分をペチャペチャ舐めて、ちょっと物足りなくなったチキンのカケラをテーブルの上からそっと僕にくれる様になった。どうも、「飼育マニュアルに吠えろ!」という最近読んだ本のせいらしい。これは、ムツゴロウ王国で2000匹の犬を育てたという石川さんが書いた本なんだけど、その中の”餌にもバラエティーを、それが生きる力に”というクダリや、”人間の残飯は貴重な餌”というクダリに影響されたらしい。そりゃそうだ。特に”一切れでかまいません、どうか人間の食べ物が残ったならば、生ゴミとせずに犬の食器に入れてあげてください「やった!お父ちゃんと同じものが食べられる、嬉しいな!」これで消化液がよく出るでしょう”という石川さんの言葉に感銘を受けたらしい。ママは甘やかすのが好きなんだ、僕は甘えるのが好きなんだ、だから僕は愛玩犬なんだ。お陰で僕のおなかはまた緩くなった。
最近ママは僕を一緒に入れて腰湯をさせている。腰湯を使った後、僕の足の動きが良いと喜んでいる。だけど二日前、なんか気持ちよくなっちゃったんだよね、オフロの中で。ママがやばい、と叫んで僕をお湯の外に出した瞬間にウンコがポロっと出た。ママは「ああ、助かった」と独り言をいって今度はホッとしたのかお湯の中で自分の顔を洗っていた。次の瞬間、小さく「ゲッ」とママの声。それからもう一個沈んでいた僕のウンコを崩さないようにバスタブの中から両手ですくって取りだした。やっちゃったね。ママは出ようかどうか迷ったらしかったが、しばらくバスタブの中でじっとしていた。もう遅いと思ったのかなぁ。でも、やっぱりそのあと、さすがにシャワーは浴びていた。ボディーソープは使わなかった。ホントはショックだったに違いない。もう遅いけど、なんかしなくっちゃって感じだったんじゃないの。
美味しいものは食べたいし、腰湯もしなきゃいけないし、ウンコはゆるいし。でも今の僕はまぁまぁ幸せ。考えるのはママ、甘えるのは僕。僕らはうまくやってると思うよ。






